カバーの絵を描きました。『放浪・雪の夜』織田作之助傑作集(新潮社刊) [仕事]

 織田作之助といえばやっぱり『夫婦善哉』である。小説も何度も読んだし、森繁久彌と淡島千景主演の映画も何度も観ている。この時の森繁久彌の大阪弁はええなぁ〜。織田作之助には他にも面白い小説がたくさんあります。・・・落ちぶれて大阪から別府へ流れてきた男と女、雪の降る大晦日の夜に男は露天の易者をしている。そこで大阪時代の知り合いの男と偶然出会う。知り合いの男は成功してお金持ちになって女連れで別府に遊びにきていた。5年ぶりに会ったので女も連れて珈琲を飲みに行くが、たいした話もないのでその知り合いの男は、大阪は変わったぜ、地下鉄出来たん知ってるな。そんなら、赤玉のムーラン・ルージュ(赤い風車)が廻らんようになったんは知らんやろなどという・・・・「雪の夜」など11編の話が収録されています。泣けるぜ。ということで昭和10年代の戎橋を描きました。


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           こちらは原画です。
           新潮文庫『放浪・雪の夜』カバー原画.jpg


 ぼくも大阪から東京に流れ落ちてはや35年余り、いまだにしがないイラストレーターであります。てなわけで今回のBGMは大阪の友人、金森幸介 with 有山じゅんじの「大阪も雨に沈んでいるかい」です。泣けるぜ。
        








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スポーツ報知「すみだ地域コミュニティー紙」6号 [仕事]

 スポーツ報知の「すみだ地域コミュニティー紙」6号が出ました。今回は特集が向島の芸者さんと言うことなので隅田川と芸者さんとちょっと早いけど桜をテーマに絵を描きました。紙面の文章は読みずらいと思うので原画と文章をそのまま一緒に載せます。僕の文章では「芸者さん」と書いていますが紙面では「芸妓さん」になっています。これは芸者さんの組合や墨田区観光課などで「芸者」さんではなく「芸妓」さんと言う呼び名が使われているために変えられています。芸者さんの方が可愛んですけどね。

           スポーツ報知「すみだコミュニティー紙6号原画.jpg

 あっという間に年が明けてしまいました。年々時間がすぎるのが早くなっていくような気がします。今回の特集が「向島の芸者さん」ということで、昨年の11月にたくさんの芸者さんたちが三味線や笛や太鼓や唄に合わせて踊る「向島をどり」を鑑賞しました。舞台の上の艶やかに踊る芸者さんたちもよかったのですが、私は観客の中にたくさんいてはった芸者さんらしいお姉さんたちの着物の着こなしや髪型、身のこなしなどに魅了されました。芸者さんをこんなに間近で見るのは初めてで、私のようなしがないイラストレーターには所謂「お座敷」の経験などないし、たまに散歩の途中で、あっ、芸者さんや、というくらいなのでとてもリッチな気分になりました。そういえばコロナ禍になる少し前に隅田川の「墨堤さくら祭り」の時に向島の芸者さんたちが「芸妓茶屋」を出しているのを見たことがあります。その時は人がいっぱいだったので素通りしましたが今年もしお店が出ていたら入ってみようと思いました。
 そういうことで今回の絵はちょっと早いけどもうすぐやで、と桜と芸者さんと隅田川を描くことにしました。参考になればと思い隅田川と桜というテーマで検索すると江戸時代には北斎に広重、明治になると小林清親とその弟子でわずか25歳で亡くなった井上安治(杉浦日向子の漫画『YASUJI 東京』のモデルの人)などたくさんの絵が残っています。それでも絵を描くためには墨堤通りを見といたほうがええかなと思い散歩がてらに出かけました。すると言問団子の店の前に一本の古そうな大きな桜の木があり、その先は今は堤防で見えないけれど隅田川で、横の道はゆっくり左に曲がっている。あれっ、この景色の感じは見たことがあるぞ、と思い家に帰ってから調べて見ると井上安治の「向島 桜」という題の木版画でした。背景の感じは違うけれど桜の木と道と隅田川の構図がこの場所に違いないと確信しちょっと嬉しくなりました。

            すみだ1月号1面(最終版)のコピー.jpg


 それからうっかりしてブログに載せるのを忘れていましたがスポーツ報知「すみだ地域コミュニティー紙」の5号も出ていますので載せます。

            スポーツ報知「すみだコミュニティー紙5号原画.jpg

 私が世田谷区の経堂から墨田区の押上に住むことになったきっかけは、もうちょっと安くて広いところ(自宅兼仕事場)に引っ越ししたいなぁと、ネットで調べていたら向島の見番通り沿いに、ちょっと古いけど広くて安いところが見つかった。グーグルのストリートビューで見たら通りをひとつ渡ると隅田川で近所の風景も懐かしい感じでええなぁ、と思いました。
 早速、小田急線と東京メトロ半蔵門線を乗り継いで錦糸町の部屋探しのチェーン店までいきました。出てきたSMAPの中居正広風の兄ちゃんに、あの部屋見せてもらえますか?と聞いたら、あれは見せられません、と言う。なんで?といくら聞いても教えてくれません。代わりの物件ばかり勧めてくるので、もぉ、ええわ、と店を出ました。せっかくなので錦糸町の地元の不動産屋があったので入って事情を説明したら、向島あたりのいくつかの物件を案内してくれました。その中のひとつは向島の料亭街にある元料亭で、部屋はリノベーションされ広さも十分で間取りも面白かった。男子トイレがあって用を足すところも2個並んでいた。かな乗り気になったけど、ただひとつ元料亭だけあってベランダが無いので洗濯物を外に干せないのである。結局そこは諦めて今の押上の懐かしい雰囲気の残る十間橋通り商店街沿いのマンションに決めました。窓から見えるスカイツリーは当時はまだ半分くらいでした。
 ここから隅田川や浅草方面に散歩に行く時に向島を通ります。夕方なんかには着物姿の芸者さんが歩いていたり昭和30年代からある季節の生ジュースとくるみパンが名物の喫茶店(残念ながら今年の7月に閉店)もある。「めうがや」という足袋屋さんもあり、暖簾(のれん)には「御召 足袋」、ガラス戸には「お誂(あつら)え」と書いてある、今どき足袋のお誂えってさすが花街向島です。
 山田洋次監督最新作、吉永小百合、大泉洋主演の映画「こんにちは、母さん」は向島の足袋屋のおかみさん(吉永)と息子(大泉)の話です。映画を見ると足袋屋のセットは「めうがや」そっくりで、実際にここがロケ地でした。せっかくなので近所やし足袋のひとつやふたつ誂えてもええかな思いました。 
 ということで今回の絵は映画「こんにちは、母さん」を懐かしい昭和のポスター風に書いて見ました。

             すみだ9月号1面0827のコピー.jpg


 そんなこんなで今回のBGMはブロッサム・ディアリーが歌う有名なジャズのスタンダードナンバー「イット・マイト・アズ・ウェル・ビ・スプリング」です。春はもうちょっと先ですけど・・・。


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ちょっと仕事の話 [仕事]

 9月に上演されるオペラシアターこんにゃく座のオペラ『浮かれのひょう六機織唄』のポスター・チラシの絵を描きました。こんにゃく座の座付作曲家となった林光がこんにゃく座のために書き下ろしたオペラ第二作目で1975年の初演以来45年ぶりの公演だそうです。
 ストーリーは村一番のモテ男だが遊び呆けてばかりで働かないひょう六。ある時村が凶作で大変なことになる。そこで村人たちは、となり村が機織娘お糸の織り出す布が評判で豊かになっていると知り、ひょう六にその男前でお糸をたぶらかして村に連れてきてほしいと頼む。ということでひょう六は晴れて色仕掛けの旅に出るのであった。これがチラシと原画です。デザインは小田善久さんです。

 浮かれのひょう六・チラシ(サイズダウン)のコピー.jpg

浮かれのひょう六・ポスター原画のコピー.jpg
         
興味のある人は、問い合わせ、申し込み
オペラシアターこんにゃく座 044−930−1720
https://www.konnyakuza.com/produce/


オペラ変身・ポスターのコピー.jpg
こんにゃく座のオペラの絵を描くのは『オペラ 変身』でカフカのポートレートを描いて以来15年ぶりです。これがその時のポスターでデザインは日下潤一さんです。





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スポーツ報知「すみだ地域コミュニティー紙」4号 [仕事]

 スポーツ報知の「すみだ地域コミュニティー紙」第4号が出ました。今回の特集は7月に4年ぶりに開催される「隅田川花火大会」ということで花火の打ち上げを待つ隅田川の屋形船と蔵前橋を描きました。
紙面のコラムは読みずらいと思うのでここに転載しておきます。よかったら読んでください。

           スポーツ報知「すみだコミュニティー季刊紙」4号.jpg
 今住んでいる墨田区の文花に引越ししてから12年ほどになります。その前は世田谷区の経堂に20年ほど、その前は大阪の豊中という所に40年ほど住んでいました。この町に来た当初、スカイツリーは展望デッキの上はまだ工事中でした。近所には川がたくさんありその親分格が隅田川であります。経堂に住んでいた頃は川といえば多摩川くらいしかなく、そこに行くには自転車でも結構時間がかかり坂道もきつくてしんどかったです。しかし今は、隅田川の桜橋までなら歩いても20分くらいで行けます。自転車なら坂道もないのでもっと遠くまで行けるような気がして、ちょっと前、コロナ禍で暇やし隅田川にかかる橋を浅草の吾妻橋から東京湾に向かってスケッチしました。いくら坂道のない川沿いでもスケッチしながらだと時間もかかり往きはよいよい帰りはヘトヘトでした。結局3回に分けて勝鬨橋まで描きました。もう次は東京湾や、というところで中断しています。どの橋も個性的で面白いのですが、僕が特に好きなのは、鉄の鎧のような厩橋、欄干になんか人工衛星みたいなのが乗ってる両国橋、今回ここに描いた黄色い橋桁と長靴みたいな橋脚が可愛い蔵前橋です。
 そういえばコロナで中止になっていた「隅田川花火大会」が4年ぶりに開催されるらしい。ここに引っ越してきた年に隅田川花火大会があると聞いて、ひょっとしてと思い屋上に登ってみるとすでに他の住人のひとたちがビニールシートを敷いて飲んだり食べたりしていました。そんなに迫力満点とは言えないけどちゃんときれいな花火を見ることができました。次の年からはビニールシートを敷いて友人たちと一緒に花火見物を楽しんでいました。ところがある時、ある会社の大きなテレビアンテナが屋上に設置されてしまい、見物スペースがなくなってしまいました。どないしてくれんねん、ずっと中止やったからええけど。さて今年はどうしたらええのかな、隅田川の周辺は人がいっぱいやろからまぁ、屋上の手前の外階段からチラ見することにしよう。


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こちらは原画です。やはり新聞に刷られると微妙な色合いなどの再現には無理がありますが、これはこれで、新聞らしい味わいがあって僕は好きです。この原画にしても近所のコンビニでカラーコピーしたもので、原画と同じではありません(最近のカラーコピーはかなり優秀ですが)。ということは画集などで見ている巨匠たちの絵画もできれば原画で見たいものです。そうだ、上野の「マチス展」に行こう!


ということで今回のBGMはグロリア・エステファンの「ミ・ティエラ」です。意味は「私の故郷」らしいです。キューバ音楽で賑やかで楽しく行こう。


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