「子規と荷風」展のこと [展覧会]

二十数年前、大阪から東京に引っ越してきて初めての連載の仕事は雑誌「東京人」で川本三郎さんの「荷風
と東京」の挿絵でした。その少し前、ある雑誌に川本さんの文章に木版画でイラストレーションを描いたと
ころ、その絵を見た川本さんが、来年から始まる連載に絵を描きませんか、といっていますと「東京人」の
編集部から電話があった。ぼくのような無名のイラストレーターの絵を気に入ってもらって連載の仕事を依
頼されるなんて、さすが、東京や!と大喜びしました。毎月原稿に書かれてくる東京の町はもうないけれど
、ちょっとでも当時の気分が感じられたらええなぁ、と思って毎月取材に出かけるのは楽しかった。荷風と
いえば「濹東奇譚」が有名で、そんなこともあってか取材に行くのは下町が多く、東京は世田谷あたりしか
知らなかったぼくは浅草や玉ノ井なんて、えらい遠いとこやなぁ、と思いました。ぼくにとっての玉ノ井と
いえば滝田ゆうの「寺島町奇譚」です。「ぬけられます」です。実際に行ってみるとあの頃の建物やどぶ川
はもうなかったけど、こんなとこぬけられるんかいな、という路地だらけでした。そんな取材で何度も来た
ことがある玉ノ井の近くに二十年後に住むことになるなんて思いもしませんでした。結局その連載は三年続
きました。下の絵は「東京人」連載時の挿絵です。

              荷風と東京 放水路.jpg


という訳で久しぶりに「子規と荷風」という展覧会をします。個展ではありません。浜野史子さんという僕
よりもずっと若い気鋭のイラストレーターとの二人展です。浜野さんが子規のことを描き、ぼくが荷風のこ
とを描きます。企画した古い古い友人の日下潤一さんの、大きい絵を描いてほしい、という命令で今まで描
いたこともない大きい木版画を作りました。二十数年前、「東京人」で連載していたときの挿絵も全部展示
します。6月17日には古い古い友人のシンガーソングライター金森幸介さんがこっそりタダで歌ってくれ
ます。20日には関川夏央さんをゲストに迎えてトークショーもあります。下の絵は今回の展覧会のために
描いた大きい絵の一部です。

           子規と荷風.jpg

詳しくはこちら http://www.visions.jp/ex/3616.html

ということで今回のBGMはスティーリー・ダンの ' ドゥ・イット・アゲイン ' です。



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山田 智司

森 英二郎様
 初めまして。昨日(25日)、展覧会で森様の版画を拝見させて頂き、また幸運なことに少しお話をさせて頂いた山田と申す者です。

何の予備知識もなく、いきなり展覧会に行ったものですから、当たり障りのない事しかお聴き出来ず、残念に思いました。

帰宅してから、ネットで森様のブログを拝見させて頂き、玉の井近くにお住まいだと知りました。私も近くの八広6丁目に住んでいて、玉の井付近はよく歩きます。玉の井いろは通りにある「玉ノ井カフェ」には結構行きます。このカフェには全国の荷風フアンガ、街歩きで立ち寄るそうです。

荷風には興味があり、今回の展覧会では、大きな版画に圧倒され、「東京人」の挿絵36点、川本さんの「荷風と東京」の挿絵も興味深く拝見いたしました。

森様の益々のご活躍をお祈りいたします。
   山田智司
by 山田 智司 (2015-06-26 10:08) 

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